ナポレオンの死因は胃癌か、ヒ素中毒かをめぐる諸説
1821年、セントヘレナ島で没したナポレオンの死因は、当時の解剖記録に基づく胃癌説が公式見解とされてきた。1960年代以降、遺髪からのヒ素検出を根拠とする毒殺・中毒説が提起され、環境由来の曝露や治療の影響を指摘する見方もあり、決着には至っていない。
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死去直後の1821年の解剖で胃に潰瘍と腫瘍が確認され、胃癌が死因として発表された。父を含む家系に胃の疾患で没した者がいるとの指摘もあり、近年のバーゼル大学の研究でも体重の激減や消化管出血の経過から胃癌説が支持されており、現在も最も広く受け入れられている見解である。
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1961年、スウェーデンの研究者ステン・フォーシュフットが遺髪から通常の数十倍のヒ素が検出されたとして毒殺の可能性を提起した。末期の症状記録がヒ素中毒の様相と類似するとの指摘もあり話題を呼んだが、検出をもって毒殺と直ちに断定できるかについては異論も強く、有力な異説にとどまる。
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当時の壁紙や保存料、ワイン樽の洗浄などにヒ素が広く使われていたことから、遺髪のヒ素は毒殺でなく生活環境からの慢性的な曝露や保存処理に由来するとみる説がある。2002年のパリ警視庁・ストラスブール法医学研究所の再調査や2008年のイタリア国立核物理学研究所の同時代人比較調査でも同水準のヒ素が検出されており、毒殺説を弱める根拠として比較的支持されている。
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主治医らが投与した下剤や嘔吐剤などの当時の治療薬が体内で有害な作用を及ぼし、死期を早めた一因になったとする見方がある。カリフォルニア大学バークレー校の研究者らが提起したとされるが、直接の死因というより増悪要因としての位置づけであり、裏付けは限定的な少数説である。
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